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海外パブリッシャー向け日本語VO収録

概要

海外(主に中国・韓国)のゲームパブリッシャーから日本語ボイス収録を受託する案件のフローです。当事業部のローカライズ案件の中で最も取扱件数が多い形態であり、国内ゲーム案件とは異なる留意点があります。

主要クライアント例: Tencent / NetEase / KURO GAMES / miHoYo / Lilith / YOTTA GAMES / Babel time / BLUEPOCH / RASTAR GAMES / XD NETWORK 等 プロジェクト保存先: 11_ボイスセクション/20_Permanent/ゲーム音声/【☆】海外案件/

国内ゲーム案件との主な違い

項目 国内案件 海外パブリッシャー案件
台本形式 日本語台本(Word/Excel) 翻訳済み日本語台本 + 原語(中国語/韓国語/英語)参照
ディレクション クライアント立会いが多い VoPM 主導 or リモート立会い。クライアントは音声チェックのみの場合も
コミュニケーション言語 日本語 日本語 + 英語(一部中国語)
台本チェック 通常フロー アダプテーション工程が必要(尺・自然さの調整)
納品ルート 直接納品 VoPM 経由 or 直接。中間会社を挟む場合あり
進行ツール Chatwork / Slack メール / WeChat / Slack / 専用プラットフォーム
NDA 通常 厳格なNDA(タイトル名の秘匿が多い。コードネーム使用)
追加収録 比較的少ない 頻繁(運営中タイトルのアップデートに伴う追加が継続的に発生)

全体フロー

Phase 0: 案件受注

  1. 問い合わせ・見積依頼の受領
  2. 海外クライアントから直接、またはローカライズ仲介会社(Keywords、ECI、IREP 等)経由
  3. ボリューム(ワード数 or セリフ数)、言語、スケジュール、キャスト要件を確認
  4. 見積作成手順

  5. NDA 締結・コードネーム確認

  6. 多くの場合、正式タイトル名は非公開(例: 「Project J」「G86」「MA128」等のコードネーム)
  7. NDA 締結前の情報共有範囲を確認

Phase 1: プリプロダクション

  1. 台本・資料の受領と確認
  2. 原語台本 + 翻訳済み日本語台本(Excel が多い)
  3. キャラクター設定資料(全身イラスト、性格設定、関係性)
  4. 原語音声リファレンス(ある場合)
  5. 確認ポイント:

    • セリフ数・ワード数がPO(発注書)と一致するか
    • ファイル命名規則が指定されているか
    • 翻訳の品質・自然さ(不自然な箇所はアダプテーション前に確認)
  6. アダプテーション・リライト

  7. アダプテーション手順
  8. 翻訳台本を「演じられる日本語」に調整
  9. 尺合わせ(リップシンク要求がある場合)
  10. クライアントへの台本チェック依頼 → 承認取得
  11. リライト担当の優先順位: 社内演出 → アダプテーション / リライト経験者 → 社外リソース(今後検討)
  12. 必須: 制作者が日本語ネイティブでない場合は必ずネイティブチェックを挟む
  13. 台本問題(誤訳・不自然表現・固有名詞読み不明等)の対処 → 台本問題対応フロー

  14. キャスティング

  15. 海外キャスティング
  16. クライアントの希望声優がいる場合は事務所に打診
  17. オーディションの場合: 音声サンプル提出形式が多い
  18. キャストの名義確認: クレジット表記名をクライアントに確認

  19. 音声仕様の確定(Audio Specifications)

  20. エンジニアと共有するための技術的根幹情報。以下を必ず書面等で確認する
  21. 収録仕様:
    • Sample Rate: 48kHz, 96kHz 等
    • Bit Depth: 24bit, 32bit float 等
    • マイク指定: Neumann U87Ai, Sennheiser MKH416 等
    • フォーマット: Mono(セリフ), Stereo(環境音)
  22. 納品仕様:
    • Sample Rate: 44.1kHz, 48kHz 等
    • Bit Depth: 16bit, 24bit 等
    • ファイル形式: .wav(Broadcast Wave), .ogg 等
    • 余白設定: PreGap(頭)/ PostGap(尻)の ms 数
  23. 入力レベル基準(キャラクター演技タイプ別):
    • 叫び(Shout): クリップしないようヘッドルーム確保(例: -12dBFS Peak 以下)
    • ノーマル(Normal): 標準的な会話レベル(例: -20dBFS RMS 付近)
    • ささやき(Whisper): S/N 比に注意しつつ適切なゲインを確保
  24. ラウドネス規定: LKFS/LUFS のターゲット値がある場合は明確にする
  25. 前後の無音部分: 音声の前後に無音を挿入するか確認(例: 0.5ms 等)
  26. 納品方法: 納品場所(サーバ)の指定(wav / PT セッション / 申し送り書)
  27. ファイル命名規則(クライアント指定 or 社内標準)
  28. 納品フォルダ構成(キャラクター別 / 日付別 / カテゴリ別)

  29. ワード数・作業量の内訳確認

  30. 見積もりおよびスケジュール作成のため、キャラクターごとに以下の詳細な内訳を確認
  31. カテゴリ別ワード数:
    • カットシーン(Cinematics)
    • インゲームテキスト(In-Game)
    • エフォート(Efforts / Grunts): 攻撃、被ダメージ、息遣い等。映像合わせが必要か Wild(自由演技)か
  32. 同期タイプの定義(クライアントにより異なるため必ず具体的に確認):

    • リップシンク: 口の動きに厳密に合わせる
    • サウンドシンク: 波形・長さに合わせる(定義A: 原音と波形完全一致 / 定義B: 口パク開閉と概ね一致し開始・終了タイミングが合えばよい)
    • STC(±0%): タイムコード厳守(尺合わせ必須)
    • TC あり: タイムコード参照あり
    • Wild: 尺制限のない掛け合い等
  33. 資料・翻訳・アダプテーション要件の確認

  34. 資料翻訳: 総量を確認し見積もり要否を判断(キャラ表、用語集等)
  35. ト書き翻訳: 台本内の演出指示の翻訳を誰が行うか明確化
  36. アダプテーション: GA(弊社)側 or クライアント側か
  37. 確認ポイント:
    • 資料の有無(キャラクター表、台本、世界観資料)
    • ムービー提供時期(スケジュールに直結)
    • 原音(リファレンス)の提供時期
    • GA アダプテーション時のクライアント監修(戻し)の有無
    • 収録時のクライアント立ち会い有無
    • 立ち会いがない場合の現場判断権限(文言修正等を GA や外部スタジオの権限で行ってよいか)
    • 原文通りの収録ファイルを保険として納品する必要があるか
  38. 息芝居(Breaths)の扱い: 台本に文字として記載されていないがムービーや原音に含まれている「息(ハッ、フゥ等)」を収録対象とするか

  39. 演出・キャスティング要件の確認

  40. 希望キャスト: 特定の声優指名 or ランク指定の有無
  41. 予算制限: キャスティング費用の上限
  42. モブ(兼役)の制限:
    • 1名あたり何キャラまで兼役可能か
    • メインキャラ声優の兼役(モブ兼任)は NG か
  43. オーディション:

    • 実施有無(オーディションを行うか指名で進めるか)
    • 形式: サンプルオーディション(既存ボイスサンプルで選定)/ テープオーディション(指定原稿を収録して提出)
    • 柔軟な対応: 一部の重要キャラのみテープオーディション、他はサンプル選定なども可能
  44. 納品・権利関係の確認

    • 納品タイミング:
    • 一括納品: 全収録・編集完了後にまとめて納品
    • 五月雨納品: 収録が終わった順 or キャラ単位で順次納品
    • 納品フォルダ構成:
    • キャラごとのフォルダ分けでよいか
    • シーン別など指定の階層構造があるか
    • 使用範囲(権利関係):
    • ゲーム本編のみか
    • トレーラー(PV)利用は含まれるか
    • パチンコ・パチスロ化などの二次利用の可能性
    • 期間の定めはあるか(買い切りか)
    • ローカライズであっても、日本の声優事務所との契約条件(使用範囲)は厳密に設定する必要がある

Phase 2: 収録

  1. グランドスケジュールの作成

    • プロジェクトの全体像を可視化し、遅延なき進行を管理する
    • 形式: ガントチャート形式推奨(タスクの依存関係を明確にするため)
    • 逆算思考: 最終納期から逆算し、収録日・編集期間を設定
    • ポスプロ期間: 収録終了〜納品まで最低5営業日のバッファを設ける
    • プリプロタスク分解:
    • 素材受領・確認
    • 資料・ト書き翻訳
    • アダプテーション(+監修期間)
    • プロダクションタスク分解:
    • キャスティング・オーディション
    • 台本フィックス
    • 各キャラごとの収録日決定
  2. 素材の確認と整理

    • 素材の不足や不一致は収録当日の進行停止に直結。受領直後の確認が必須

    • 原音ファイル:
    • 整合性チェック: 台本の全ダイアログに対し原音ファイルが存在するか。内容は一致しているか
    • フォルダ整理: キャラクターごと or シーンごとにフォルダ分け(顧客側で整理済みの場合はそのままで可)
    • 原音ファイルのリネーム: 台本の順番に再生できるように連番をつける(個別番号を割り振る)
    • ムービー:
    • 網羅性: 全てのカットシーンに対してムービーが存在するか
    • 一致確認: ムービー内の音声は台本(原文)と一致しているか
    • タイムコード表示: ムービーにタイムコードが焼き付けられているか確認。なければ表示させる処理を行う
  3. 台本化・翻訳補完

    • 収録現場で使用できる「完全な台本」へ仕上げる工程
    • 未翻訳部分の対応: ト書き、キャラクター名、資料などが未翻訳の場合、外注 or 内部スタッフで翻訳
    • 重要性: 声優事務所へのオファー(資料送付)や現場でのディレクションに必須のため、早期に行う
    • タイムコード記載: カットシーンのダイアログに対し、ムービー内の開始秒数を記載する
    • ID管理:
    • 全体の通し番号を設定
    • 各キャラごとの個別番号(M01, F02 等)を設定
    • 原音ファイルのリネームは個別番号を割り振る
  4. リネーム・キャスティング

    • リネーム: 台本で設定した「個別番号」に従い原音ファイルのファイル名を変更(セッションへのインポート時、台本順に自動整列させるため)
    • キャスティング依頼: 顧客の希望に合わせ声優事務所へ打診。オーディションの場合は必要資料(ボイスサンプル等)を依頼
    • スケジュール確定: 完成した台本を各事務所へ配布し、具体的な収録日時(香盤)を組む
    • マイルストーン管理: 納期から逆算したデッドラインを守るよう調整
  5. セッション作成指示(PM → エンジニア)

    • PM の役割: 演出担当者と協議し収録方法(A or B)を決定。エンジニアに対し Pro Tools セッションの作成を依頼する
    • エンジニアの役割: PM の指示に基づきセッションを仕込む(詳細は下記「エンジニアタスク: セッション仕込み」を参照)
    • 方法A: ムービー同期方式 — カットシーン系。セッション内に動画をインポートして尺合わせ
    • 方法B: 音声リピート方式 — インゲーム系。原音を2回ずつ並べて収録
    • 決定した収録方法(A or B)に基づき、カットシーン毎・キャラ毎にセッションを組むようエンジニアに指示
  6. 収録準備

    • NAS 上にプロジェクトフォルダ作成 → プロジェクトフォルダ構造
    • Pro Tools セッション作成(セッション命名: YYYYMMDD_[Client]_[Project]_[Actor]
    • 台本の印刷 or iPad 配信
    • ディレクション資料の準備(キャラ設定、参照音声、演技メモ)
  7. 収録実施

  8. 通常の 収録当日オペレーション に準拠
  9. 海外案件固有の注意点:

    • 原語音声を参考に感情トーン・テンションを合わせる
    • 固有名詞の読み方を台本資料で事前確認(中国語/韓国語由来の名前)
    • 掛け声・エフォート系音声が大量にある場合、効率的な収録順序を組む
    • クライアントリモート立会い時: Source Connect or Audio Movers で音声共有
    • PM の役割: 原則として通訳として収録に入る。演出不在時はエンジニアと協力しディレクション補助も担う
    • クライアント指定ツールがエンジニアPCで使えない場合は PM 側 PC 経由で接続 → 海外クライアント別ルール
  10. 収録後処理

    • セッションデータのバックアップ
    • テイクの選定・マーキング
    • ディレクターチェック用データの書き出し(必要に応じて)

Phase 3: ポストプロダクション(エンジニアタスク)

  1. 書き出しのフローとルール

    • ローカライズ編集手順
    • 指定の尺に合わせて収録データのトリミングを行う
    • 台本と原音に記載されている個別番号に合わせてクリップをリネーム(ズレがないかしっかり確認)
    • 指定のフォーマットに沿ってクリップを書き出す
    • フォルダ構成: 日付_役者名/キャラ名/(シーン名[カットシーンの場合])
    • 映像のセッション納品が必要な場合: 日付_シーン名_キャラ名 でフォルダをネーミング
    • 音声データはドライブにアップロードし、セッションデータはサーバーにアップロード
  2. QC

    • 台本照合(セリフ抜け・誤りチェック)
    • 音質チェック(ノイズ、クリック、ポップ)
    • ファイル数の突合せ(台本のセリフ数 = 納品ファイル数)
  3. 納品

    • 納品前最終チェック
    • クライアント指定の受け渡し方法(Google Drive / 自社サーバ / 専用転送ツール)
    • 納品報告メール(日本語 + 英語テンプレート使用)

Phase 4: リテイク・追加収録(運営タイトルの場合)

  1. リテイク対応

    • クライアントからのフィードバック受領
    • 修正箇所の台本確認 → 再収録日程の調整
    • 同一声優の確保(スケジュール調整が重要)
  2. 追加収録(アップデート対応)

    • 運営中タイトルは数ヶ月〜数年にわたって追加収録が発生
    • 前回の収録データ・設定を引き継ぐ(トーン・レベルの一貫性)
    • 過去音声フォルダで前回の音声を参照可能にしておく

プロジェクトフォルダ構造

NAS 上の標準的なフォルダ構成(【☆】海外案件/ 配下):

【クライアント名】プロジェクト名/
├── 台本・キャラ資料/       ← 台本Excel、キャラクター設定、資料PDF
├── セッションデータ/       ← Pro Tools セッション(年別サブフォルダ推奨)
│   ├── 2025/
│   │   ├── 20250326_[Actor]/
│   │   └── 20250401_[Actor]/
│   └── 2026/
├── 未編集データ(32bit48khz)/  ← 収録原音
├── 編集済みデータ(16bit48khz)/ ← 編集後・納品前
├── リネーム済/              ← クライアント命名規則でリネーム後
├── 納品/                    ← 最終納品データ(日付_声優名 サブフォルダ)
│   ├── 20250326_伊吹誓乃/
│   └── 20250401_中原麻衣/
├── 過去音声/                ← 追加収録時の参照用(前回納品分コピー)
└── 撮影データ/              ← インタビュー映像等(該当案件のみ)

クライアント別の特記事項

韓国クライアント(넥슨・카카오ゲームス等)

引き継ぎ注意度の高いクライアント

以下のクライアントは引き継ぎが特に複雑なため、クライアント別ルールを事前に確認すること:

台本管理の注意点

エンジニアタスク: セッション仕込み

PM からのセッション作成指示(上記 Phase 2 ステップ15)に基づき、エンジニアが Pro Tools セッションを仕込む。

方法A: ムービー同期方式(カットシーン向け)

方法B: 音声リピート方式(インゲーム向け)

書き出し時の参考資料

関連ドキュメント

更新履歴

日付 変更内容 担当者
2026-03-15 韓国クライアント・引き継ぎ注意クライアントの特記事項追加(幕田PMヒアリング)
2026-04-09 ローカライズマニュアルPDFに基づき大幅更新: 音声仕様詳細・同期タイプ定義・ワード数内訳・息芝居・演出キャスティング要件・納品権利関係・グランドスケジュール・素材確認整理・台本化翻訳補完・セッション作成指示(方法A/B)・エンジニアタスク・書き出しフロー追記
2026-03-16 リライト担当優先順位・ネイティブチェック必須化・PM役割(通訳/ディレクション補助)を追記(黄ヒアリング第7回)
2026-03-05 初版作成(NAS実データに基づく業務フロー整理)